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水口邸
あたたかみのある春色ののれん
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ひと足先にそこだけぽっと春が訪れたような八重梅ののれん。「前回は薄い紫で夏のイメージだったから、今回はお雛まつりを意識してあったかい色がいいかなと思って」と純子さん。 掛ける側も、ひとつこしらえると、春、夏、秋、冬、と四季それぞれに違うものがほしくなるという。
ピンクというより茜を薄くしたような自然の色あいは、意外にも化学染料。一日中かけておくのれんだから、色もちする化学染料をリクエストするお宅も最近は多い。草木染めだとどうしても色褪せが早くなるのだそうだ。
「やっぱりすごく大事にしたいから、昼間だけかけとこうかとか、雪がちらついている日や雨風が強い日はしまっておこうかなんて思ってしまう。だけどそれでは意味がないでしょ。のれんを見にわざわざ勝山までいらっしゃる方にも申し訳ないし、よんちゃんの技もお見せしたいしね」。
よんちゃんこと、作者の加納さんとはもともとおさななじみの間柄。製作中も何度か呼ばれ、色を確認しあったという。そのせいか、出来上がった作品は、優しげな純子さんのイメージそのもの。住まい手とのれんは必ずどこか雰囲気が重なる。
もともと花が大好きで、前回は「時計草」の図柄をリクエスト。この花自体を知っている人が少ないせいか、テッセンと思い違いをされることもあったそうだ。そんなこともあってか、最近は観光客の反応にも少し敏感になった。「横が駐車場だから、観光客の方が歩いてこられる気配がなんとなくわかる。いいわねーなんて声が聞こえてくるとやっぱりうれしいですよ」。
実家を離れて30年間岡山暮らし。8年前にご主人の実家のある勝山に戻ってきたものの、久しぶりの故郷に最初は戸惑うことも多かったそう。けれど、お年寄のボランティア活動に参加したり、愛育委員を委嘱されたりと、最近はすっかり地域活動にも忙しい日々。3月のお雛まつりには、玄関先にお目見えする手作りのお雛飾りとともに、こののれんが一層映えるに違いない。
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