西蔵
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ここ美作の国にまつわるお酒の話や町の話題・蔵人のないしょ話・蔵からのメッセージなど、エッセイ風に皆様にお届けしていきます。
その四十四(2004年2月1日)

▲西蔵のメニューのひとつ、「板粕の天ぷら」。
のし梅以外に中にはさむものを変えるなど、工夫次第でいろいろな味が楽しめそう。 
   
 
息も凍りそうな寒さが続く1月下旬。蔵はまさに寒造りの真っ最中。甑(こしき)からは、もうもうと湯気が立ち上り、法被姿の蔵人たちが、蒸し米の入った布袋を肩にかついで忙しそうに駆け回る。今年もまた、ほのかに甘い麹の薫りがするタンクの中から、次々と新酒がうぶ声をあげるのだ。


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この時期、特に人気の酒粕
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酒粕は、新酒をしぼった翌日に出る副産物である。特に最近、酒粕の効用が見直され、新酒だけでなくこちらも心待ちにするファンは多い。
もともと同じもろみから生まれるわけだから、良質の米と米麹から造られる純正の酒粕にはコクと香りがある。しかしながら、伝統的な造り酒屋から出荷される酒粕は近年品薄で、ゆえにますます需要が高まっているのだ。

 凍てつく寒い夜、野菜や魚類、豚肉などを入れてふうふう言いながら食べる粕汁は、このうえなく美味しいもの。体が芯からあったまり、滋養にもなる。酵母のタンパク質をはじめ、ビタミンBやミネラル、植物繊維などが豊富に含まれ実際に栄養価も高い。江戸時代の人は「かす」という語感は失礼と思ったのか、「手握り酒」「酒骨」などと呼び、重宝なものとして親しんでいたそうだ。料理好きにも酒好きにも愛される酒粕は、まさに日本の伝統食材なのである。


▲板粕をはがすのはすべて手作業なので、とても手間がかかるのです。 ▲俗に「やぶた」と呼ばれる酒の搾り機。ゴム盤と板盤の中をもろみが通り、コンプレッサーからの空気圧によって、固体(板粕)と液体(日本酒)が分離される。

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栄養たっぷり、料理にも大活躍
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 さて、ひとくちに酒粕といっても、蔵からでるものは、大きく分けて板粕と留粕の二種類がある。

 発酵を終えたもろみは、搾り機にかけられ「上槽」となるが、その時、液体(日本酒)と分離されて残る固体が板粕である。一方、留粕はこの板粕をもう一度タンクに戻し、半年間再発酵させたもの。板粕にくらべて色が黒く、やわらかなペースト状で、こちらはおもに奈良漬け用として使われる。
 上等な酒になるほど粕歩合(註1)が高くなり、白米の重量に対し、普通酒や本醸造酒では2〜3割、吟醸酒では3〜4割前後、大吟醸酒になると、なんと5割が粕となるそうだ。

「板粕は、酒の種類によってある程度ばらつきはありますが、本醸造酒など、米がよく溶けている酒は、板粕もなめらかで味がしっかりしてますよ」と話すのは、蔵人の宮川さん。
 逆に、吟醸酒などの高級酒は米を溶かしきらないので、粕の中に米のつぶつぶが残る。けれども、そのデリケートな甘みと華やかな香りはさすがに贅沢。やわらかいのであえものなどには便利だし、そのままでも、うまく熟成させて使っても、とびきり上等な粕漬けの材料になる。

 酒粕を使った料理といえば、やはり粕汁や粕漬けが定番だが、左党の向きは、冷蔵庫に板粕を常備しておけば、年中酒の肴として重宝する。砂糖をふりかけ、オーブントースターまたは網にのせあぶって食べる。これだけでも実にうまい。子どもの頃、おやつに食べたという人も多いだろう。砂糖の代わりにチーズをのせて食べてもおいしいそうだ。
 吟醸粕のように、酵母が生きている酒粕ならば、考えようによってはイースト代わりにもなる。小麦粉と水と酒かすを混ぜてこねて、さつま芋かなにか入れ、しばらく寝かしてふかせば、ふっくらとした蒸しまんじゅうの出来上がりだ(ぜひ試してみたい…)。

▲はがしたばかりの板粕。これを袋詰めにし、全国へ出荷される。

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最近注目の美肌効果
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ほかに目先の変わったところで、なにかないかと、プロの料理人にお知恵を拝借。御前酒のレストラン、西蔵の田淵料理長にお願いして実際に作っていただいた。
 出てきたのはなんと「板粕の天ぷら」。板粕の間にのし梅をはさみ、衣をつけて揚げたもので、上品な酸味と甘み、それにアルコールとお酒のいい香りが口の中でまろやかに溶け合う。
「たくさんは食べられないかも」と横で笑って下さったが、思ったほどにくどくはなく、ぱくぱくといただいてしまった。
 通常は、吟醸酒とともに先付けとして出されるものだそうだが、食後のデザートとしてもうれしいオツな一品である。西蔵では、このほか大吟醸の酒粕をつかったイノシシや銀だらの粕漬けも人気。酒かすを使ったデザートなども開発中だそうだ。

 工夫次第で、いろいろとアイデア料理が生まれそうな酒粕だが、最近は、食べるだけでなく、直接肌に塗る酒粕パックなる美容法も脚光を浴びている。
 酒づくりにたずさわる杜氏や蔵人たちの手が白くてキメがこまかいのは、麹の中にアルブチンとコウジ酸というニ大美白成分がたっぷりと含まれているからだそうだ。むろん酒粕にもこの効果があり、お肌の改善に役立つ、というわけである。
 食べてよし、塗ってよし、お風呂に入れてよしの酒粕効果。3拍子揃ったところで、そろそろお後がよろしいようで…。(酒粕をお風呂で使う時は、必ずガーゼなどに包んでお使いくださいませ)

註1)粕歩合=粕の重量/仕込みで使用したすべての白米重量。白米1トン(1000kg)の仕込みで200kgの酒粕が出ると「粕歩合20%」となり、残りの80%は米が溶けて清酒中に含まれる


2004年2
月1日


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