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ここ美作の国にまつわるお酒の話や町の話題・蔵人のないしょ話・蔵からのメッセージなど、エッセイ風に皆様にお届けしていきます。
その四十二(2003年12月1日)
    
 
男たちの気迫がみなぎる年に一度の勝山まつりも終わると、いよいよ本格的な紅葉シーズン。
 この時期、川の水も澄みわたり、川面にうつる城山も急に秋色を帯びてくる。山林が町の面積の85%を占める勝山は、紅葉の季節もまた格別だ。 
 ほかにも勝山には美しい景勝地があり、川の流れと石灰岩が織りなす奇岩や怪石など変化に富んだ意外な見どころも存在する。

 
たまには、観光客になってそんな周辺を散策してみるのもいいかもしれない。さわやかな秋風に誘われ、11月のはじめ勝山を訪れた。

 空は高く青く、汗ばむほどの陽気である。まずは保存地区から車で10分のところにある「神庭(かんば)の滝」へ向かう。ここは、日本の滝100選にも選ばれた名勝地。野生のお猿さんたちの生息地としても有名で、この地方を代表する紅葉狩りのスポットとしても親しまれている。

 駐車場に車をとめ、滝までの約1キロの道のりを歩く。ほとばしるような渓流の水音が響く小立の中に入ると、一瞬にしてさっきとまるで違う空気に変わった。人の気配はかき消され、ここからはまさに野生の領域だ。 途中、「玉垂れの滝」という美しい滝があり、しばし目を奪われる。苔むした岩から、すだれのようにきらきらとしずくが落ちる様子はまさにその名の通り。なんとも風流である。

 受付で200円を払ってさらに園内へ。切り立った懸崖を眺めながら、最奥まで進むと、かなたに110メートルの高さからどうどうと垂直に落ちる滝があらわれた。その大きさは、見るというより仰ぐという言葉がぴったりだ。

 容赦なく岩を削るその勢いに圧倒されつつ、青い空を割って一気に落下してくる白い奔流を見ていると、心が洗われるような不思議な気持ちよさに包まれる。大いなる自然のバイブレーションに浄化される感覚…。実際、滝にはマイナスイオン効果があるというから、現代人にとっては森林浴と同様、その恩恵は絶大である。


▲しずくがきらきらと落ちる「玉垂れの滝」 ▲鬼の穴とよばれる洞くつ。
コウモリの鳴き声がかすかに響いてました…     
▲ちいさい秋みつけた…

 それにしても、小立に入った時に感じた凛とした空気にも似て、けわしい自然の造形は、一方で畏れ多いものだと思う。ただ美しいというだけでなく、言葉では言い表せない近寄りがたさがある。崖の中腹にある鬼の穴(侵食されてできた嘔穴)にも上ってみたが、そこはまるで異界の入り口のようで、一人で先に進むには正直少しこわかった。

「神庭」という名前もなんだか神秘的だ。
太古の昔からここは神域でもあったかもしれない。禊祓いの場として古くから信仰の対象とされてきた滝。むろんこの神庭の滝にも不動明王がまつられており、毎年4月には護摩供養が行われているそうだ。

 園内を散策し、ふと、肝心のお猿さんの姿がまったく見えないことに気付いた。神庭の滝といえばお猿さんだろうと内心楽しみにしていたのに、足をすくわれた気分である。不思議に思って受付の女性にたずねてみたら、秋は豊富な木の実を目当てに山へ帰ってしまうのだという。近年餌付けもされているので日に何度かは下りてくるそうだが、やはり秋は山の恵みの方が野生の猿たちにとっては魅力的なのだろう。ちなみにいつもは200匹ほどのお猿が園内で自由気ままに暮らしている


▲武家屋敷界隈 ▲武家屋敷や寺院など、歴史散歩も楽しい ▲黄金色に色づきはじめた三田神社のイチョウの木

神庭の滝をあとにして、保存地区にもどり、陽気に誘われるまま周辺をぶらぶらと散歩してみた。

 古い商家が並ぶかつての出雲街道沿いの東側には武家屋敷や寺院があり、城下町の歴史的なたたずまいを見せている。

 公開されている武家屋敷館は、三浦藩の御用人をつとめた渡辺氏の屋敷。周囲の民家とあまりにも自然に溶け込んでいるせいか、はたまた係の方のていねいな説明のせいか、ここに誰も住んでいないことが逆に不思議に思えた。 ふとした風景も、散歩途中に出会うと実に新鮮だ。ポツンと朱い実をつけた柿の古木、神社の境内で黄金色に輝く見事な大イチョウ。日溜まりの中で楽しそうに遊ぶ母子…。小さな秋を見つけて心がほっとなごむ。

 そんな秋の一日散歩。お猿たちに会えなかったのは少し残念だったが、自然の深い懐に触れていると、新鮮な水が五感に染み込んでいくようで、その感覚がなんともいえず心地よかった。


2003年12月1日


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