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出会いと交流が愉しいギャラリー&カフェ
【勝山文化往来館ひしお Cafe うえのだん】
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梅雨が明けた7月、勝山の文化交流体験施設として6月にオープンしたばかりの「勝山文化往来館ひしお」を訪ねた。もともとの建物は明治時代中期に建てられた古い醤油蔵。外観はありし日の面影を残すように再現され、棟と棟をつなぐガラス張りの回廊からは、勝山の町並みを一望できる。
「うえのだん」は、「ひしお」内にあるギャラリー&カフェスペース。内部は、歴史を刻んだ太い梁や柱など古材があちこちで息を吹き返し、温もりのあるモダンな空間へとステキに変身をとげている。元醤油蔵のあった一番上の高台を、所有者であった清友家の人々が「うえのだん」と呼んでいたことから、馴染みがある呼び名がそのまま店名になった。簡潔でいかにも勝山らしい響きである。
「ひしお」は公共施設でありながら、運営するのは、地元勝山在住の「NPO法人 勝山・町並み委員会」の人々。「うえのだん」のカフェスタッフ、岡田聖子さんも生粋の勝山っ子だ(実は、のれんの制作者加納容子さんの娘さん)。
「やっぱり大好きな勝山で仕事がしたい。それは自分にとって譲れない部分」。将来は、できれば勝山で旅館の女将がしたいと夢はふくらむ。勝山のためになにができるか、どんなことをしたら訪れた人に楽しんでもらえるか、胸の中にはいっぱいの思いがあるようだ。
「勝山は、押しつけがましいところがなくて
おもしろい町じゃなあって言ってもらえて、
それがすごいうれしかった」。
「うえのだん」のオープンにあたっては、最新式のカフェマシンを導入。本格的なエスプレッソは、まさにプロ仕込みである。
「でも、地元のおばちゃんとかが来ると、聖子ちゃん、せっかくやるんじゃから食べるもんもおいたらどうなん? 親子丼とかどんな?って勧めてくれたりもして、それがおかしいんよ」と破顔になる。
現実にこの発想を受け入れるのはちと厳しいものがあるかもしれない。でもそんな風に、ある意味ボーダレスにコミュニケーションが成立するというのが、のんびりとしたこの町ならではの愉しさである。
都会のモダンなカフェにありがちなスノッブな空気はここにはない。分け隔てなくどんな客でも受け入れてくれる。それは、ここに住む人たちが自分たちの町のために構想を練り、勝山らしさをいっぱい散りばめてつくった共有の場所だからだと思う。
居心地がいいのは歴史を刻んだ木の温もりのせいだけじゃないだろう。迎えてくれるこの町の人たちのやわらかな感性のおかげなのだと思う。 |