雄町の未来は、御前酒が醸す
御前酒 雄町3部作
産地篇
「米に任せる」
「風土を醸す」
全国の生産量の9割以上が岡山県という「雄町米」。ひとことで「雄町米」と言っても様々な産地があります。岡山という風土を知り、県内の様々な産地の雄町米で酒を醸してきた当蔵元だからこそ成し得るアプローチが今回の「雄町三部作~産地篇~」。
敢えて精米歩合・使用酵母・仕込み配合・温度管理などを統一し、「米に任せる酒造り」に徹することで、それぞれの雄町米が育った風景を感じて頂けるのではないかと考えます。
原料玄米成分分析
(収穫年2020年)
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真庭
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糊化温度今年の雄町の中では高い部類、タンパク質多い傾向、カリウム通常
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瀬戸
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糊化温度低い(昨年同様)、タンパク質多め、カリウム通常から多め
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高島
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糊化温度低い(昨年同様)、タンパク質少なめ、カリウム多め
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地区 | 糊化温度 (℃) |
粗たんぱく質 (%湿) |
水分 (%) |
粗たんぱく質 (%乾) |
カリウム (ppm乾) |
|
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真庭 | 66.1 | 6.46 | 16.4 | 7.73 | 2543 | |
瀬戸 | 特等 | 64.3 | 6.08 | 16.6 | 7.29 | 2600 |
1等 | 64 | 6.94 | 16.1 | 8.82 | 3133 | |
高島 | 64.7 | 6.15 | 16.1 | 7.32 | 3635 |

吟醸香が
酒母~もろみまで漂う
蔵元からほど近い岡山県北部では、かつては10月には霜が降りることから収穫の遅い晩生品種の酒米栽培には適さないとされていました。しかし果敢な若手農家の挑戦により、2014年の契約栽培開始から年々品質は向上しています。 今シーズン入荷の真庭産雄町は糊化温度が高く、蒸した後すぐに硬くなる印象。溶けにくいと予想し、仕込み時の温度を少し高めに設定することでバランスを取りました。


仕込んだ後は優等生的に美しい温度経過をたどり、9号酵母とは思えない吟醸香が酒母~もろみまで漂いました。しぼりの日は蔵に入るや否やメロン様の香りが広がっていました。
杜氏マイコのテイスティングノート
色はやや青冴えした黄緑。苦みや雑味が少ない。粘土質の土壌の由来か、雄町らしいふくらみ・どっしりとした押し味を感じる。

雄町の風格が
米からも漂う
岡山県南東部に位置し一級河川吉井川が流れる瀬戸地区は、朝晩の寒暖差が大きく「心白」が出現しやすいと言われる赤磐雄町の一大産地のひとつ。
麹・酛掛け米に「御前酒 特上雄町プロジェクト」の指定圃場生産者岡本さんの雄町を使用しています。一粒一粒がパラパラとサバケが良く、やや硬さはありますが雄町の風格が米からも漂います。仕込み温度を調節して米が溶けやすいように操作しました。


杜氏マイコのテイスティングノート
バナナ様の香り。砂状地由来のミネラル感があり、軽快な酸が心地よくキレ味抜群。

写真)
雄町米元祖 岸本甚造翁碑
雄町発祥の地に
大きな敬意を表す
岡山市の東部に位置し「雄町」の名前の由来ともなった旧高島村雄町。雄町発祥の地に大きな敬意を表しながら醸しました。
雄町米は非常に割れやすいため、収穫した籾(もみ)も非常にデリケート。その後の乾燥調製ひとつで米質が大きく変わります。高島地区ではライスセンターで丁寧に乾燥調製しており、粒ぞろいも良く割れは最も少ないお米でした。


杜氏マイコのテイスティングノート
色は黄緑。マスカット様の吟醸香がある。やや甘味がありなめらかな味わい。雄町らしいふくらみが出た。
- 糊化温度(こかおんど)
- 酒米を蒸した時に透明の糊(のり)状態になる温度のこと。
糊化温度が高いと発酵中に溶けにくくキレイな味わいのお酒になり、
低いと溶けやすく、米の旨味がしっかりと感じられるお酒になります。 - 青冴え(あおざえ)
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しぼりたてのお酒にはうっすらと色が付いているのですが、通常は黄緑色~黄色の間です。
お酒に雑味が少なく出来の良いお酒はこの色になると言われています。 - 心白(しんぱく)
- 酒米の中心部にある白く濁った部分のことを心白と呼びます。
心白は酒造りに適した良質なでんぷんが含まれています。