そんな麻衣子さんに、今年の「自信作」を聞かせてもらった。
グリーンのボトルに入った雄町米純米酒「9(ナイン)」。おやっ?これまでの御前酒にはないルックス。一見ワインかと見紛うスタイリッシュかつ茶目っ気のあるラベルは、七代目の総一郎さんがデザインしたそうだ。
中身は、天然の乳酸菌を沸かせる「もと仕込み(菩提もと)」という昔ながらの技を使った骨太な造り。しっかりと奥深く、それでいてスッと後が切れる。まさに麻衣子さんの目指す酒質をそなえた一本だ。ちなみに、数字の9は、力を合わせた9人の蔵人の心意気を表す。「10 」の一歩手前という意味もあり、プラス1の可能性を秘めた進化形の酒といえそう。
もう一本は、お馴染み「美作の極」。岡山県工業技術センター所長賞を受賞したというだけあって、その美質はお墨付きである。
「山田錦ならではのきれいですっきりとした酒。でもこれは、造り手の味というより、先代がこれまで大事に守り育ててきた蔵の味といってもいいと思います。環境のなせる技というものなんでしょうね」。
麻衣子さん自身の原田杜氏への思い、御前酒への愛情が詰まった、まぎれもない、蔵の代表銘柄ともいえる地酒だ。
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