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ここ美作の国にまつわるお酒の話や町の話題・蔵人のないしょ話・蔵からのメッセージなど、エッセイ風に皆様にお届けしていきます。

その六十七(2008年3月1日)

〜春を呼ぶ暮らしの歳時〜 勝山のお雛まつり


今年十回目を迎える「勝山のお雛まつり」。
江戸時代の貴重なお雛
さまから、かわいい手作り雛まで、百六十軒の家々が自慢のお雛さまを公開します。
伝統的な美しさと
遊び心を散りばめた勝山ならではの暮らしの美学。訪れる人をふわっと包み込んでくれる、その
魅力を
のぞいてみました。取材・文/三村佳代子



 節分を過ぎたばかりのまだ寒い冬の最中、旧家の奥座敷では、ひと足早くお雛まつりに向けたしつらいの準備が始まります。
文化元年から続く老舗の蔵元・辻本店。本宅の客間である「如意山房」は、かつて与謝野鉄幹・晶子夫妻や俳人・河東碧梧桐(かわひがし・へきごとう)など数々の文人・墨客を迎えたところ。昔ガラスの向こうには、伊達藩の江戸屋敷を模した枯山水の庭が広がり、その格式を今に伝えています。


 「年中行事は、昔から必ず家族全員が揃って行うのが習わし。
桃の節句はとりわけ賑やかで、お雛さまを飾り、花を活け、お寿司やはまぐりのお吸い物を膳にのせて華やかにお祝いしました」。
 そう話すのは、蔵元夫人の辻智子さん。古きよきハレの日の光景を今の子どもたちにも伝えたい…。そんな思いから、辻家に代々伝わる貴重なお雛さまを、人形作家・藤原了児さんの土びなとともに公開したのが十一年前。これをきっかけに翌年から、町をあげてのおまつりがスタートしたのです。

 辻家が所蔵するお雛さまの多くは、二五〇年続く京都の老舗「丸平大木人形店」のもの。頭、髪付け、手足、小道具、金襴、造花などすべてに最高の職人たちの技を結集したその人形工芸品は、古くから宮中や財閥、名家の人々に愛され、丸平でお人形を誂えることは、ひとつのステータスシンボルとされてきました。今年は、長崎の呉服商に嫁いだ「本式束帯雛十五人揃」も「如意山房」にお目見えし、丸平の名作人形が賑やかに集います。

    

 有職故実にのっとった衣裳や着付け…、細部の一つひとつに至るまで、繊細で優美。時代を反映した気品あふれる目元や表情、そして今にも動きそうな所作からは、往時の名匠の力量がうかがえるといいます。

 それにしても、桐の櫃に納められたお人形を一つひとつ丁寧に取り出し、屏風や掛け軸、数々の調度品や衣裳などを飾りつけるのは、想像以上に時間と労力をともなう作業。

「少なくとも一ヶ月はかかりますね。毎年毎年、本当に頭を悩ませるけれど、多くの方に観ていただけるのはとてもうれしいこと」と智子さん。

 一年、また一年と、大切に受け継がれてきた伝統のお雛さま。蔵の中の眠りから醒め、巡りくる早春の日ざしの中で、今年はどんな表情を見せてくれるでしょうか。四季おりおりの自然の中から生まれた五節句の風習。城下町ならではの生活文化の美しさ、豊かさにも触れながら、やさしい時間を堪能してみてください。






「丸平の人形」
▼日時/三月一日(土)〜五日(水)
        
午前十一時〜午後四時
▼場所/如意山房(御前酒蔵元)
▼入場料/500円




 「しぼ」のある、やわらかで美しい日本の伝統絹織物「ちりめん」。勝山のお雛まつりに愛らしい温もりを添え、毎年女性客の目を釘づけにしているのが、保存地区や商店街のおかみさんたちが制作している「ちりめん細工」です。

 
厄よけの這子人形や、九猿(苦を去る)のつり飾り、うさぎ雛や立ち雛、手鞠などなど、思わず買い求めたくなる(!)ほどの完成度の高さ。まつりの会期中は、あちこちの店先や玄関先で、色とりどりの力作がお目見えします。

 
さて、このちりめん細工。趣向として広がるきっかけとなったのは、商工会女性部の手作り教室でした。お雛まつりの実行委員でもある栗田孝子さんの声かけに応え、当時婦人部の部長を務めていた福田節子さんが、町内に住む大塚房子さんに指導と協力を依頼。最初に作ったのは、手のひらに乗る小さなちりめんのウサギ雛でした。

福田さん(左)と大塚さん。「同じ型紙を使って同じように縫っても、
創る人によって風情や表情もまったく違うから不思議なんよ」。


 「せっかく作るのなら美しいものを」と、大塚さんはこのとき、ご自身が集めていた江戸、明治、大正期の貴重なちりめん古布を惜しげもなく提供。そして第一回目のお雛まつりに、その古布をまとった風雅な手作り雛が、各家々に揃って並んだのです。

 この取り組みを機に、同じ地域
に住む女性たちが楽しみを共有し、ご近所との交流も広がっていきました。
 
あれから十年。年々弾みがつき、各自の腕前にも磨きがかかっている様子。勝山女性の美的感覚と手先の器用さ、そしてなにより、そのあたたかなもてなしの心に、今年も酔いしれてみてください。




●辻均一郎さん(勝山観光協会会長/御前酒蔵元辻本店社長)
 
「第一回目のお雛まつりの際は、来訪者が五千人、それがあっというまに4万人。小さな町にとって、この5日間はまさに嵐の賑わいです(笑)。
そんな中でも、勝山のキャパや風景に見合ったバランスは、常に見失わないでいたい。勝山の人間というのは、自分たちにふさわしいものや町のあり方に対して同じ価値観を共有しています。
だから勝山のお雛まつりに
は一切タイアップもなし、露店もなし(キッパリ!)。観光目的の行事ではなく、もともとあるコミュニティの強さを生かして、あくまで、自分たちの生活から生まれるものを大事にしていきたいですね」。

●行藤公典さん(勝山のお雛まつり実行委員長)
 
「けんかだんじりが男のまつりなら、お雛まつりはやっぱり女性が主役。
勝山の女性は、ほんとにようこだわる。飾りつけやしつらいもそうだけど、毎年作るお雛さまのポスターも、ああでもないこうでもないと、毎回それは熱心なことです(笑)。男衆は、まあせいぜい山(城山)にあがって飾りつけに使う竹を切り出したり、用水路の掃除に精を出すくらいかな。年々観光客の数も増え、勝山の地域性や文化を高く評価してもらえるのはありがたいこと。でも昔から、協調しながら自分たちの暮らしを楽しむ、その勝山人のスタンスは変わりませんよ」。
右から行藤公典さん、明美さん、栄さん。栄さん、明美さん手作りのちりめん細工


お雛まつり十周年記念誌が出来ました!!






勝山のお雛まつり十周年記念誌
発行元/勝山お雛まつり実行委員会
TEL 0867-44-2120(勝山観光協会)
オールカラー140頁 1600円
 平成十一年に第一回目がスタートした「勝山のお雛まつり」。十周年の節目にあたる今年、その歩みを振り返る記念誌が発行されました。ページをめくると、一軒ごとに、工夫を凝らした美しいひな飾りや思い出の写真が紹介され、その横にはやさしいメッセージが添えられています。実際の編集を手がけたのは、久世在住のデザイナー、瀧崎昌惠さん。

「町の人や実行委員会の方の想いに応えられるよう、勝山らしさ、その家らしさがでるような写真や表現に心を配りました」。それだけに町の人の喜びもひとしおのよう。訪れる人の心をとらえて離さない勝山のお雛まつり。自分たちの町をこよなく愛し、生活の中から楽しさを見出す勝山の人々の、そのままの魅力と素朴なあたたかさが伝わる一冊です。







「結果的にみんなが力を合わせて作り上げた記念誌になりました。私にとっても勝山をより深く知ることのできた一冊。縁あってたずさわれたことはなによりの誇り」と瀧崎さん。

2008年3月1日



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