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ここ美作の国にまつわるお酒の話や町の話題・蔵人のないしょ
話・蔵からのメッセージなど、エッセイ風に皆様にお届けしていき
ます。
その六十五(2007年9月1日)
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今、なぜ御前酒なのか?
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末次(以下敬称略)
御前酒のおもしろいところはね、土着に徹した昔ながらの造り酒屋という点にあると思うね。
もともと造り酒屋というのは地域の情報発信基地の役割も兼ねてたわけですよ。
まつりがあって、町の暮らしや文化があって、それを道楽を知る地元の旦那たちが守り育てていく。
御前酒には、そういう町文化の担い手的なところがある。実際、商売よりもまずまつり!って感じでしょ(笑)。
博多にも山笠ってまつりがあるけど、あれは行政主導じゃない、町の旦那衆が一ヵ月顔色変えて町の中を走り回る。
勝山のけんかだんじりもまさにそれですよ。
高橋
酒を売ることよりも、日本酒文化の伝承に力を入れてる。そういうところがまさに酒屋の「旦那」なんです。
一高橋さんたちが中心となっている御前酒CLUBの趣旨もそこにあるんですよね。
高橋
発足して10年になりますけど、ただお酒を飲むのではなく、日本酒の文化を知り、日本酒しか合わない空間を演出し、そこで味わったり楽しんだりできるプロの酒飲みを育てようというのが発端ですね。
一具体的にはどんなことをするんですか?
高橋
たとえば春だったら花見なわけですが、緋もうせんを敷き、陣幕をはり、野点を楽しみ、そして花をめでながら日本酒とお膳を味わう。秋だったら後楽園の鶴鳴館を借りて、小唄・端唄、文楽なんかを観ながら一杯って感じですね。
一聞くだけでうっとりしてきます。日本酒にもちゃんと礼をつくさないと(笑)。
末次
日本酒を交わすことは「さかずきごと」といって、行為自体がもともと神事だからね。
高橋
戦前、日本酒はとても高級なもので、座敷で芸事をみながら飲むものだったわけでしょう。日常の疲れや憂さを晴らすために飲むのは焼酎ですよ。
一なるほど。これからひやおろしの時期で、お酒もおいしくなるわけですが、おすすめの楽しみ方ありますか?
末次
落ち葉を炊いて燗酒を飲む。このシチュエーションかな。燗酒ってのはね、あったかいところで飲んじゃだめなんだよ。冷たい空気の中で、背中はちょっと寒いけど内側からあったまろうかみたいな、そういうパターンがいいね(笑)。
御前酒の「菩提もとにごり酒」を燗付けして一杯…。
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日本酒の実力と可能性
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末次
日本酒ってね、温度を変えてやるとガラリと味が変わるんだよ。世界の中で、冷やでも燗でも飲める酒って日本酒しかない。
燗酒ひとつとっても、日向燗、人肌燗、ぬる燗、上燗、熱燗、飛切燗…なんてね。冷酒の場合は、雪冷え、花冷え、涼冷えだって。
こういう酒の飲み方、温度帯までも言葉で表現する日本人の感性ってすごいよ。
多くの人にこの楽しみ方を知ってほしいね。たぶん外国だと、ストレートに「○℃」と数字で言う意外にはない(笑)。
高橋
日本ならではの叙情的な文化がありますよね〜。
末次
最近、にごりを燗にするってのに凝ってんだ。炭酸成分の細かい泡がしゅわしゅわ昇ってきたところでひき上げる。
ーマニアックな!! ちなみに料理は何を合わせましょうか。
高橋
乳酸のかたまりですからねえ。フレンチでもイタリアンでも、チーズ系、バター系と合わせるとすごく美味しいでしょう。
ー料理とのマッチングでいえば、日本酒の実力ってすごいですよね。和食、中華、フレンチ、イタリアンと、ワインに比べてキャパシティは広い。
もちろん選び方、出し方にもよると思いますが。
高橋
そう。だからこれからは料飲店の役割がますます重要になると思うんですよ。料理との相性を考えていかにお酒をおいしく飲んでもらうか、自分にとっての一番のこだわりもそこなんです。
末次
酒は単独で飲むもんじゃなくて、料理があって初めて生きてくるものだからね。高橋くんのところは天婦羅だから、濃醇タイプが多いね。
高橋
無濾過生原酒ってやつです。でもこれをお鮨屋さんにもっていくと、お酒の方が強すぎてなにを食べてるかわからなくなると思います。
逆にお鮨屋さんの淡麗辛口の酒をうちにもってくると、逆に線が細すぎて頼りない。
末次
だからね、日本食の料理人にももっと酒のことを勉強してほしい。刺身にはこれ、焼きものにはこれ、揚げものにはこれっていうふうに、一品ごとの料理を引き立ててくれる絶妙の酒があるんだから。僕は、日本酒もショット売りにすべきじゃないかと思うね。
高橋
同感です。
末次 威さん
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今後の日本酒の展望
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末次
日本酒は、売れなくなったというよりも、本物志向の時代に戻ったという方が正しいんじゃないかな。
高橋
確かに。今残ってる蔵元というのは、ナショナルブランドの桶売りではなく、ある意味、自分の蔵の個性をきちんと守り抜いてるところばかりです。
一これから、日本酒の展望を考える上で大切なことってなんでしょう。
高橋
テイスティングのプロを育てていくことはもちろんだけど、それを前提に、そのお酒のバックボーンや作り手の思い、風景までを語れるってことがキーワード。グラス一杯、おちょこ一杯の中にあるストーリーを語れる料理人や蔵元が絶対に必要になるでしょうね。
末次
そういう意味ではね、御前酒は本当に安心して飲める。話しのネタにつきないからね。辻社長や原田のおやっつあん、麻衣ちゃんや蔵の連中の人柄…、あと勝山の町の風景とかもそうだし、とにかくいろんなことを語りながら飲める酒ですよ。
高橋
おやっつあんが亡くなってね、正直不安もあったけれど、本当にすばらしい酒ができたじゃないですか。
普通杜氏が変わると、3年は味が落ちる。だけど麻衣ちゃんは最初の年で金賞を穫った。そのとき言ったひとことが忘れられないんですよ。
「だって私はこの蔵で生まれてこの蔵の酒の味しか知らないんですから」って。
おやっつあんの伝統の技を生まれた時からそばで見て感じて、体に染み込ませてた。そんな彼女が造る酒がおいしくないわけがない。
改めて御前酒以外のなにものでもない味を実感させてもらいました。
一いいお話ですよね。日本酒の文化を知り、蔵のストーリーに思いを馳せながら呑む。やっぱりこれに尽きます。今日はありがとうございました。
高橋 克慈さん
プロフィール
■末次 威さん
NPO岡山地酒応援団理事長であり、ラーメン店「どんたく」の大将。毎年春と秋に、県内の蔵元が多数参加して行われる試飲会を主宰し、きき酒師として、また蔵と消費者を結ぶコーディネーターとして活躍。岡山の地酒を語る上で欠かせない人物。
■高橋 克慈さん
岡山で戦後から続く天婦羅の老舗「天婦羅たかはし」の三代目主人。日本酒と料理とのマッチングに造詣が深い。御前酒CLUBの発足メンバーの一人でもあり、現在委員長として、酒文化の伝承に力を注ぐ。
2007年9月12日
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